お盆の帰省で感じる親の変化。子どもが「今」できること

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※この記事はお盆に実家へ帰省し、親御さんの変化や衰えに気づいた娘さんに向けた内容です。


年に一度の帰省や、夏の里帰りは、遠く離れた両親と再会し、家族の絆を実感できる貴重な時間です。
しかし、その一方で、ふとした瞬間に親の衰えや健康の問題に気づき、不安な気持ちになることはありませんか?

『あれ?お父さん、この車の傷どうしたの?』
『お母さん、ちょっと味付け濃ゆくなってない?』
『なんだか、歩くのゆっくりかも?』

すぐに何とかしないといけない程ではないのですが、
なんとなく「大丈夫かな?」「あれ?」といった違和感を感じる場面に遭遇します。

そんなとき『気のせい』と安心したい気持ちが入り混じること。それもまた、自然なことです。

この記事では、市役所にて年間2,400件の相談を受けてきた私がそんなお盆の帰省時に感じる親の変化にどう向き合い、どう行動すればよいのかを、実家の家族との関係性や暮らしのささいな変化をもとに考えてみたいと思います。


1. 帰省は、観察のチャンス

お盆の帰省は、長時間家族と過ごす絶好の機会です。
家の中でのささやかな変化に気づくことも多いでしょう。

家の外で気付けること(見えやすい変化)

  • 歩く速度が遅くなっていないか?
  • 階段はスムーズに登れているか?
  • 買い物時、セルフレジと有人レジのどちらを使っているか?
  • お金の支払いはお札と小銭が使えているか?
  • 重い荷物をしっかり持てているか?

家の中で気付けること(見えにくい変化)

  • 昔に比べて、家が散らかっていないか?
  • 食べ物の賞味期限が切れているものがないか?
  • 郵便物や書類が府を切らずそのままになっていないか?
  • 2階や、いつも使わない部屋の窓は開けた形跡があるか?
  • お薬手帳やお薬の入っていた袋があるか?
  • 以前は家で食べていた食事を、「外食にしよう!」と提案することが増えていないか?

関わりの中で気付けること(親子だからわかる変化)

  • 料理の味付けは濃くなったり、薄くなっていないか?
  • 会話をしていて、違和感がないか?
  • TVで話題のこと、ニュースなど時事ネタについていけてるか?
  • 昔と変わらず趣味を続けているか?
  • 会話に家族以外の人の名前が出てくるか?
  • 香水の匂いがきつくなっていないか?

親子なので、「最近、体調は大丈夫?」と直接聞いてみることも良いでしょう。
ただ、親は「子どもに心配をかけたくない」、「子どもには子どもの生活があるから」とあえて言わない人も多いです。
そのため、日々の「掃除」や「片付け」、「買い物」「食事の準備」などに目を向けてみてください。
その細やかな変化に気づくことは、必要な対応を考える大きなヒントになります。


2. 親といえど、歳はとるを認める

テレビで高齢者ドライバーの事故を見ると、「免許を返納してよ!」「危ないな!」と思うのに、
自分の親だと「気をつけて運転している」「車がないと不便だから」とつい甘くなってしまいます。

私たちは、産まれたときから元気な両親しか見たことがないので、どうしても「親=元気」と考えがちです。
(逆に子どもに対しては、赤ちゃんの時代を知っているので、何歳になっても心配が先立ちます)

また、「元気であって欲しい」と、少し思い込ませる部分もあるのではないでしょうか?

あなたが気づいた小さな「?」は、確かな変化のはじまりかもしれません。

確実に言えるのは、親であっても人。

私たちが白髪に悩んだり、シミを気にしたり、お腹のでっぱりが気になるように、
親の身体もまた年齢とともに変わるということを、少しずつ心で理解する時期なのかもしれません。


3. 親だからこそ気を使え!どう伝えるか?「言葉」の選び方

相談で多いのが、親に心配であることを伝えたが聞く耳を持たれないというもの。

私たち子どもが心配しても、行動するのは親。
親にこちらの気持ちを「理解」してもらうこと。
これが最も難易度が高いです。

あなたは、このような言葉をかけていませんか?

 「お父さん、ボケよるっちゃないと?」
 ※実際に相談で聞かれる言葉をあえて使用しています。

 「お母さん、前より料理下手になってない?」

 「白髪の増えて、一気に、ばあさんになったね」

 「ちょっとは趣味とかして、出かけた方がいいよ。〇〇ちゃんの家のお父さんは・・・」

 「介護が必要になったら、私が困るとよ、忙しいとに」


上の言葉を見て、どう思いますか?
酷い子どもと思いますか?
違います。
これ、実は、全部心配している子どもの言葉なんです。

親という、世界で一番近い人に、配慮がなく心配の言葉を投げかけた姿です。

ただ、こちらの一方的な「心配」や「指摘」は、親の心を傷つけ、関係を悪化させることもあります。
(私も、父に「意地悪言わないで」と言われます)

特に、年齢を重ねた親と私たちには、「世代の感覚」や「暮らしのスタイル」の違いもあったり、仕事を引退していると、社会の情報からも疎くなってしまっています。

また、心配に対する受け取り方も個人差があるため、絶対に効いてくれる魔法の言葉はありません。

お父さんに伝える言葉、お母さんに伝える言葉、これらを最初に考えていく必要があります。

ただ共通して言えるのは、「大切に思っていることを丁寧に伝える」ということです。

おそらく、このブログを読んでくださっている「あなた」は、その気持ちがある方だと、私は思っています。


4. 変化の兆しを見逃さないために

親の暮らしぶりや「家庭」の様子をよーーーーーく観察してみてください。

掃除や洗濯の頻度

綺麗好きなお母さんだったのに、なんとなく家が汚れている印象はありませんか?掃除は思った以上に身体を使う作業です。もしかしたら、掃除をするのがきつく感じているのかもしれません。

収納状況・部屋の様子

物が雑然としている、季節感のないものが置いている(夏にストーブ、冬に扇風機)、ゴミ箱が溢れかえりそう、荷物が入っていた段ボールがそのまま放置されているなどなど。お盆やお正月など帰省が分かっているとその前に片付けていることが多いので、急に家に行ってみるとより普段の様子がわかります。

食事・味の変化

認知症の気づきで多いのは、味の変化です。味がすごく濃ゆい、味噌汁に出汁を入れていないなどもエピソードとしてよく聞かれます。また、「外に食べに行こう」「何か出前を取ろうか」など料理を作りたがらないこともあるようです。ただし、医師や健康診断の結果を受けて、あえて減塩したりしている場合もあります。そのような場合は、「お母さん、調味料変えた?」と尋ねてみましょう。「ああ、最近血圧が高くて減塩にしているのよ」と理由がしっかり返ってくる場合は大丈夫でしょう。逆に「え?いつもと同じよ。お母さんの味忘れたの?」と本人は変えたつもりがない場合は少し気にかけた方が良さそうです。

その他(仏壇・郵便物の管理など)

また、「仏壇」のお花が造花に変わっていたり、「墓参り」の頻度が減っている、「郵便物」が長い間放置されていることも、親の心や「気力」の一つの指標です。さらに、親の「態度」や、「対応」に硬さや、「感覚」の違いを感じたら、「身体」や「体力」の衰え、そして「健康状態」のチェックを検討しましょう。

これらの兆しに対して、「専門家」の意見やアドバイスを仰ぐことも一つの方法です。


5. どう準備し、何をすればよいか

お盆の帰省を前に、「準備」すべきことや、「自分たち」ができることも多くあります。

  • 心の準備  :親の衰えや変化に対し、頭ごなしに焦るのではなく、一旦飲み込むこと。
  • 物理的な準備:部屋の「片付け」や、「寝具」の交換など、小さなことでも「暮らしやすさ」を整える。
  • 情報の収集 :親の健康や身体の変化に関する情報や、「負担」を軽減できる「方法」について調べておく。

また、家族みんなで協力して、「無理のない範囲」で対応することも大切です。


6. できるだけ「解決」策を考えながら

誰もが、住み慣れた家で暮らしたいもの。
私は、シニア向けにアタマの体操教室を年間150回開催しています。
初回は「これから、どのように過ごしたいか?」を必ずお尋ねするようにしています。
一番多い答えは、「家で暮らすこと」です。

仕事や子育て、自分たちの生活があると思います。
自分の時間を大切にしながら、どうやって親の生活を考えていくのか。
このバランスと戦略が非常に大切です。

高価な家電・健康器具をプレゼントするのも良いですが、
「今の暮らし」が細く長く続く方法を考えるために、私たち専門家を頼ってみてください。


7. まとめ ~親孝行とともに、自分自身の気持ちを大切に

親と過ごす時間には限りがあります。
残された子どもの後悔として、「親孝行をすればよかった」というのは一生心に残ります。
かくゆう、私もその一人です。

このブログを読んでくださっているあなたは、まだまだ親孝行ができるチャンスがあるのではないでしょうか。

介護は終わりのない、マラソン。
だからこそ、しっかり給水したり、準備運動、練習をして望むことが大切です。

専門家が力になります。
一緒に、悩みましょう!そして、よりよい方法を考えましょう!
親のために全てを注ぐ必要はありません。
あなたが子どもさんや旦那さんと過ごす時間、好きなことを楽しむ時間も大切です。
近くに住んでいていも、離れていてもできることは必ずあります。
(当社には、関東や東北からも相談があります。)



投稿者プロフィール

認知症リハビリ専門 宮崎有希